リンパ腫(小児がん)とは?
リンパ腫(Lymphoma)は血液細胞由来のがんで、全身のあらゆる部位に存在するリンパ系組織から発生します。リンパ腫はホジキンリンパ腫 (Hodgkin Lymphoma, HL) (写真1)と非ホジキンリンパ腫 (non-Hodgkin Lymphoma, NHL)に大別されます。
大人ではそのうちの非ホジキンリンパ腫がさらにたくさんの種類に分けられますが、小児では発症する非ホジキンリンパ腫の種類は限られていて、下記の4種類で全体の90%以上を占めます。その4種類とは①びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫 (Diffuse Large B-cell Lymphoma, DLBCL) ②バーキットリンパ種 (Burkitt Lymphoma, BL) ③リンパ芽球性リンパ腫 (Lymphoblastic Lymphoma, LBL) ④未分化大細胞性リンパ腫(Anaplastic Large Cell Lymphoma)です。①DLBCLと②BLはあわせて成熟B細胞性リンパ腫 (mature B-cell Lymphoma, B-NHL)と呼ばれ、一般に同じタイプの治療が行われます。
小児のリンパ腫は小児がん全体の約7-10%をしめ、白血病、脳腫瘍、神経芽腫に続く第4位の発症頻度です。我が国に発症する小児がんの患者さんの多くが登録されている日本小児血液・がん学会による疾患登録の集計によると、平均でホジキンリンパ腫が年間約20例、非ホジキンリンパ腫が年間約130例登録されています(2008年から2010年の3年間の集計) 。我が国では欧米の国々と比較してホジキンリンパ腫の発生頻度が低いのが特徴です。
小児のリンパ腫は小児がんの中で、標準的な治療を行うことにより、比較的高い確率で治癒が見込める病気です。しかし、小児のリンパ腫は全身のさまざまな部位に発症することで多彩な症状を示し、とくに非ホジキンリンパ腫は急速に進行し病院に受診した時点ですでに生命の危機や重大な後遺症を残す可能性がある状態に陥ってしまっていることが珍しくありません。そのため小児のリンパ腫に対しては、小児がんに習熟した医師、スタッフによる適切な初期対応がとても重要です。
リンパ腫の診断には病変の一部を切り取って行う生検による病理組織学的診断が必須です。多くの場合で治癒が見込める病気であるからこそ、最初に正しく病理診断を行うことは何よりも大切と言えます。一方で、最初から生命に関わるような緊急性のある状態となってしまっているときには、生検は行わず暫定的な診断のもと抗がん剤治療や放射線照射を開始する決断が必要となる場合があります。小児のリンパ腫の初期対応では、小児血液腫瘍内科医だけでなく、レントゲンやCT、MRIなどによる画像検査から病気を鑑別する放射線診断医、病気の場所により適切な方法での生検に対応する小児外科医、耳鼻咽喉科医、皮膚科医などの外科系医師、生検を行う際の麻酔を安全に行う麻酔科医、病理診断を行う病理診断医、適切に放射線治療を実施する放射線治療医などのチームによる迅速な判断がとても大切です。またとくに病初期においては、呼吸、循環を保つために集中治療室で厳重な管理を行うことがあります。